宵月の雲にかれゆく寒さかな
膝がしらつめたい木曾の寝覚哉
灯火の言葉を咲すさむさ哉
我宿の雪のはしり穂見にござれ
白妙のどこが空やら雪の空
雪路哉薪に狸折そへて
この雪がふらうふらうと師走まで
富士の雪我津の国の者なるが
雪降夜握ればあつき炭団哉
鰒くふて其後雪の降にけり
水よりも氷の月はうるみけり
井のもとの草葉におもき氷柱哉
何ゆゑに長みじかある氷柱ぞや
われが手で我顔なづる鉢扣
鉢扣古うもならず空也より
節季候や臼こかし来て間がぬける
世の花や餅の盛りの人の声
惜めども寝たら起たら春であろ
灯の花に春まつ庵かな
欄や髪の扇に年ゆく日
惜まじな翌のつぼみとなる年を
流れての底さへ匂ふ年の夜ぞ
燃る火に灰うちきせて念仏哉
人間に知恵ほどわるい物はなし