和歌と俳句

除夜

流れての底さへ匂ふ年の夜ぞ 鬼貫

匂ひしは夢にや見たる除夜の梅 青蘿

おもしろう松風吹けよ除夜の闇 青蘿

大極にものあり除夜の不二の山 子規

うき除夜を壁に向へば影法師 漱石

除夜の畳拭くやいのちのしみばかり 水巴

除夜の星ほのかに明し庵の空 石鼎

除夜の灯のどこも人住む野山かな 水巴

仏壇を灯す孤影や除夜の母 爽雨

ゆきし人は帰らず除夜の灯かな かな女

歳の夜や迎春香の名をめでゝ 喜舟

踊り子や除夜の淑女を眼に愉む 誓子

踊りつつ異国の旗の下の除夜 誓子

除夜たのしワルツに青きひかりさす 誓子

踊り子も冷たきものを飲める除夜 誓子

ジヤズバンドはしやぎて除夜も深まれる 誓子

燈影をはばみてもゆる除夜の炉火 蛇笏

境内のまつくらがりや除夜の寺 淡路女

観音は近づきやすし除夜詣 虚子

除夜たぬし警笛とほく更くるとき 鳳作

廻転椅子くるりくるりと除夜ふくる 鳳作

除夜更けて女の衣袂ひた急ぐ 波郷

今宵除夜睡き耳藉しつゝねむる 桃史

父の間に父ゐますごと除夜更くる 波津女

陸の燈の絶えたり除夜の船に寝る 波津女

除夜を寝て寝台は海の上を航く 波津女

積雪に月さしわたる年の夜 蛇笏

放心にひまなくもゆる除夜の炉火 蛇笏

もののけに小童ねむる除夜の炉火 蛇笏

一穂の除夜のみあかし枕上 蕪城

仮住の身に一穂の除夜の燭 蕪城

みほとけに一盞献ず除夜の燭 蕪城

星空に居る大富士や除夜の駅 たかし

よそびととうとまるる身を除夜の炉に 蕪城



冬の日 顔見世 冬の空 水鳥 初雪 初氷 寒さ 冬木立 枯木 冬枯 枯尾花 冬の山 枯野 みそさざい 都鳥 千鳥 冬の海 河豚 海鼠 冬ごもり 埋火 焚火 炬燵 風邪 マスク 襟巻 手袋 足袋 日向ぼつこ 北風 霜夜 冬の雨 冬の月 冬至 柚湯 クリスマス 師走 年の市 煤払い 年忘れ 餅つき 歳の暮 行く年 大晦日 除夜 除夜の鐘