和歌と俳句

高橋淡路女

子供等は羽子突いてゐる師走かな

掃納め門燈くらく思ひけり

仲見世や時雨降り出でし最合傘

日短くとつかは戻る我が家かな

冬ざれやものを言ひしは籠の鳥

鉢巻をとつて会釈や大根引

おだやかにぬくき日のあり枯芒

茶の花や一つ一つの花盛り

境内のまつくらがりや除夜の寺

まざまざと過ぎし月日や古暦

古暦よき思ひ出もなき身かな

水靄に鳰のよく鳴く日和かな

海女の髪つれなう赭き小春かな

寒牡丹臆しげもなく濃かりけり

寒林やしろがね色に日の面

うつむけば櫛の落ちたる木の葉髪

笹鳴の来ぬ日とてなし針仕事

実をつゞる竹柏の古樹や神の留守

補陀落やあらはにおはす那智の滝

大滝や斎きかしづく巫女ひとり

修験者と時雨やどりや大廂

初冬や少し熱しと野天風呂

南国の石蕗の黄いろあたたかく

短日の陽のうらうらと蜜柑山