和歌と俳句

高橋淡路女

海苔干すや春まだ寒き海のいろ

落花掃き居れば友来し垣根かな

手折る女の袖の長きかな

昨日今日落ちかさなりし椿かな

海苔干すや船出払へる磯日和

風吹いて石鹸玉とぶ早さかな

花つけて野蒜の先きのやゝたわむ

高々と葉うら見上げぬ大椿

跫音におどろく蝌蚪や水浅し

傘さして馳け来る女春の雨

いとほしや髪そゝくれて古雛

麻の芽や栃木平野の東風強し

うつゝなに泣く児あやすや猫の恋

からたちも古りて花咲く我が家かな

汐干舟かへりつくして海暮れぬ

初午や菜畑もある邸内

や障子つくろふ糊ついで

白魚に水おもくあげし四つ手かな

春水にふるへうつれる杭ぜかな

摘みためてぬくさよ掌に

こゝろよき土のぬくみや菊根分

木瓜咲くや日南好みて縁に縫ふ

夜桜に月は七日か八日かな

渡舟つくやおくれてあがる蜆売

雨霽れの水の匂ひや蝌蚪の池