一葉
よの人の心の色にくらぶれば花のさかりは久しかりけり
雀来て障子にうごく花の影 漱石
土器に花のひつつく神酒哉 子規
更けゆくや花に降りこむ雨の音 虚子
京女花に狂はぬ罪深し 虚子
花咲いて妻なき宿ぞ口をしき 子規
観音で雨に逢ひけり花盛 子規
寐て聞けば上野は花のさわぎ哉 子規
花に暮れて由ある人にはぐれけり 漱石
千木見えて花に埋もる社かな 虚子
町はづれ花すこしある社かな 虚子
我病んで花の発句もなかりけり 子規
銅像に集まる人や花の山 子規
左千夫
くにうちに飢泣く民のあると聞けば花を過ぎつつ楽しとも見ず
左千夫
千万のむつの同胞飢に飢なげく此春花何にさく
朝日さす杉間の花を数えけり 碧梧桐
花の風山峰たかくわたるかな 蛇笏
里内裏老木の花もほのめきぬ 虚子
北嵯峨や藪の中なる花の寺 虚子
花手折る女の袖の長きかな 淡路女
西方に没る日は古風花堤 蛇笏
ざらざらと櫛にありけり花ぼこり みどり女