鶯横町塀に梅なく柳なし
野道行けばげんげんの束すててある
足の立つ嬉しさに萩の芽を検す
山吹や小鮒入れたる桶に散る
うたた寐に風引く春の夕哉
永き日や雑報書きの耳に筆
初午に鶯春亭の行燈哉
藍壺に泥落したる燕哉
京に来てひたと病みつきぬ花盛
我病んで花の発句もなかりけり
山吹の花くふ馬を叱りけり
雪の絵を春も掛けたる埃哉
蓑掛けし病の床や日の永さ
蒲団着て手紙書く也春の風邪
二番目の娘みめよし雛祭
母方は善き家柄や雛祭
汐干より今帰りたる隣哉
雪残る頂一つ国境
下駄借りて宿屋出づるや朧月
芹目高乏しき水のぬるみけり
手に満つる蜆うれしや友を呼ぶ
池の端に書画の会あり遅桜
銅像に集まる人や花の山