和歌と俳句

東武線ねむたき花をとどろかす 秋邨

花更けぬ波の明暗胸に翳し 秋邨

花淡く我が長身の影うまる 秋邨

座敷には鼓出されて花に月 たかし

チチポポと鼓打たうよ花月夜 たかし

花の上に月星遠し谷の坊 たかし

子守して花の芥にたたらふむ 青畝

夜は深く花のかぶさる軒端かな 青邨

父母の老きづきおどろく花日和 草城

花くらし高照る春の夕雲に 草城

空襲の灯を消しおくれ花の寺 久女

近隣の花見て家事にいそしめる 久女

咲き移る外山の花を愛で住めり 久女

経の声和し高まり花の 虚子

神域の心得読むや花の下 虚子

花の道掃くことおもひとどめたる 青畝

いさざ舟もやひて花の二三軒 青畝

花一木あり人これを四方より たかし

行き来せる野良人花にかゝはらず 占魚

ひとり子の我が子か花に言誓ふ 鷹女

騒人にひたと閉して花の寺 虚子

紋付の紋しみじみと花の下 汀女

花の山諸将の館の址を訪ふ 青畝

十五万石の城下へ花の坂 青畝

一院の花に終始すたたずまひ たかし

比叡遠く愛宕近しや花の里 虚子

花の寺末寺一念三千寺 虚子

花咲きて堂塔埋れ尽すべし 虚子

満員の電車が通る花縫うて 立子

わが齢これよりと思ふ花に立つ 立子