寒詣なむぢななたび生れよと
薮入や鳶の喧嘩もなつかしく
涅槃図を舁きつつ廊を僧来る
肩ぬぎぬそれより田打鍬高く
鵯の言葉わかりて椿落つ
花の道掃くことおもひとどめたる
いさざ舟もやひて花の二三軒
藤の花這うていみじき樹齢かな
短夜やほどけばすぐに絵巻物
滝幽かたどりくるかも雲の間
須磨涼し今も昔の文のごと
浜木綿に牟婁の岩礁とこしなへ
雨風に甕のごとくに南瓜かな
蟷螂の弓杖つくもはずむまま
霧とべりとよめる那智のたぎつ瀬に
八千草のあさきにひろふ零余子かな
何の木といふことなしに御所紅葉
留守の神つれづれぐさの文に在り
はらはらとはしる雑仕や神迎
鴨の鳴く土師の古道かい暮れぬ
鴛鴦に月のひかりのかぶさり来
ゆげむりの如くに蕎麦を掻きにけり
神楽笛ひょろひょろいへば人急ぐ
笛吹きし榾はひつぱり出されけり