広前ににほひたてたり年の豆
灯の宮の春日明神年の豆
野に出でてどこにかはある畦火かな
禅寺も落花の塵はとがめなし
花よりも安楽椅子のあるがよし
衣冠をば脱ぎすてたりし更衣
祭礼に太鼓ひたすら貴船かな
あやめ生ふ湖畔の馬頭観世音
茶屋の裏紺青にして夏の川
御成とぞ蟻の道だになかりけり
如法塔青葉若葉の翠微中
頂上の百合そちこちと立ちあがり
登山口大吊橋を躍らせり
大空に長き能登ありお花畑
戸の前に太刀の雪渓さかしまに
猿飛といふは涼しき渓を謂ふ
山涼し都忘れと聞くからに
月漏りてこころもとなき枢かな
一すぢの雲に遅月のつてゐし
風頭かぶりて芋を掘りにけり
水澄みて金閣の金さしにけり