阿波野青畝
国原
御帷の御裾長や初詣
一花や洞然として福寿草
いぬふぐり囁く足をあとしざり
一の字に遠目に涅槃したまへる
幹裏に花の帚の一凭れ
石楠花や雲の巻舒を目のあたり
天の原雪渓の襞そろひたる
父の齢しみじみ高き昼寝かな
昼寝あはれ咽喉の佛のものを言ふ
花見せてゆめのけしきや烏瓜
入相の茜むなしき野分かな
金堂の柱みな月明らかに
籾かゆし大和をとめは帯を解く
障子隙寒紅梅の翁さび
高き木の立並びけり神無月
里神楽秋の田の額昔より
てつちりと灯るところも又繁華
青桐は柱のごとし畳替
梨棚のところに来たり帰花