和歌と俳句

短夜

短夜や茄子に恋ひ寄る芋の蔓 泊雲

短夜や梁にかたむく山の月 石鼎

短夜を押しあがりたる井水かな 喜舟

短夜や磧に灯る晒布小屋 喜舟

短夜や枕上なる小蝋燭 鬼城

短夜や梁に落ちたる大鯰 鬼城

短夜や舟してあぐる鰻縄 鬼城

晶子
みじか夜は稚児めきて明くころころと蛙鳴くなる枕上かな

短夜の庵をつつみて松の幹 石鼎

もどらずよ挽木の反も短夜は 龍之介

短夜や妹が仮寝の髪の艶 草城

短夜やあすの教科書揃へ寝る 草城

短夜の夢魔に負けたる哀れかな 草城

短夜や袴をたたむ独りもの 草城

牧水
みじか夜の いまだ小暗き 明方の とほ山に湧く 雲の真白さ

短夜や引汐早き草の月 水巴

短夜や戸のうちを行く燈の見えし 石鼎

短夜や冷泉橋の潦 播水

短夜のをのこをみなや蜑が宿 夜半