和歌と俳句

短夜

短夜のあけゆく水の匂かな 万太郎

短夜や鏡にかけし覆の紋 万太郎

短夜の鉦鼓にまじる磬の音 虚子

短夜の日本の幅を日本海へ 草田男

短夜の青嶺ばかりがのこりけり 楸邨

短夜の櫛一枚や旅衣 汀女

短夜やこの坂の下地中海 万太郎

短夜の心もとなき嵐かな 石鼎

短夜や夢も現も同じこと 虚子

みじか夜の夢をまだ追ふ浪まくら 蛇笏

短夜の一身棺にをさまりて 蛇笏

みじか夜や焼けぬしようこの惣二階 万太郎

みじか夜の夜っぴてついてゐる灯かな 万太郎

みじか夜の奇しきは人のさだめかな 万太郎

湯の川のみじか夜あけし疾きながれ 万太郎

あけがらすみじか夜ないてすぎしかな 万太郎

源三位嗣ぐ短夜の宿あるじ 青畝

短夜の壁のみなぎる看りかな 不死男

短夜や窓搏ちゐしは藤の蔓 悌二郎

短夜の痛みの中のねむりかな 林火

短夜の栞忘れし頁かな 汀女

濡れてゐしこの短か夜の足の裏 楸邨