短夜の日本の幅を日本海へ
夜をこえし誘蛾燈のみ濤の音
誘蛾燈畦みなうねり裏日本
荒海や島なく日の辺朝焼けす
朝焼けやささべりの漁家いまだ醒めず
荒海や松は肉削げ草は濃く
花柘榴くちびるなめて嫗どち
また巷路つばくら低きとまりやう
旅の身は電柱に倚り鯉幟
犀川を見送り様に梅雨漏れ日
梢ごし旅に見下ろす運動会
家ふかく昼の一燭柏餅
菖蒲葺く日やここの温泉はこの熱さ
冬燕湖とぶことをあきらめず
北陸の星なきこよひ灯の金魚
友とあり五日六日の菖蒲湯に
青蘆が松の枯枝に丈とどく
青蘆の髪のみだれに日の光
夏蝶ひたと羽伏せて砂の安宅道
沖は梅雨雲歴史の幕のとざされて
柿落花石山への道すでにしろ
石山仰ぐ白き夏日の路溜り
芭蕉の旅路森へ抜けけん巌すずし