みな直立紅銀の糸新芒
汝等まろき脂ぎつたる空蝉よ
流水一途七色ひびきあひて虹
虹立てり病来るまで病まざるなり
虹明り杖で刈りたる花二三
渓流や蟇住む泥の座も一坪
銀河依然芽のまま萎えし病の芽
秋晴や故友の命の継穂われ
たはやすく薔薇のまみれし砂はたく
足袋越しに足打ちし水重かりし
回想自ら密度に誇り法師蝉
文字の上意味の上をば冬の蠅
家を追はれし長子氷りし鯛一尾
春を待てる汝が子の眼澄む見たまはずや
春落日添景もなく海に赤し
我が声は紙に記すのみ雉子の声
清水の声と妻には誘はるる
ここに又無事叫喚の行々子
鳰の仔や花藻の下辺餌に満つや
葛の葉の昼の裏見や親子牛
馬も牛も二重瞼に母の日ぞ
蓮に佇つや肋あらはの聖者ならで
上下の夜河原ほのと此所踊り
紅袂徒歩に石踏み踊るなり
行く水に横顔続けや踊の輪