雨風に任せて悼む牡丹かな
白牡丹いづくの紅のうつりたる
白牡丹といふといへども紅ほのか
方丈に今届きたる新茶かな
セルを著て肩にもすそに木影かな
田を植うる男許りの山田かな
降りかくす森見て立ちし田植かな
早乙女の重なり下りし植田かな
真夜中の町幅廣し螢とぶ
蚊の聲のむつと打ちたる面かな
蚊いぶしの煙に遊ぶ蚊にくし
美人繪の団扇持ちたる老師かな
役者繪の団扇尚ある伯母の宿
宗鑑の墓に花無き涼しさよ
涼風の暫くしては又来る
紅さして寝冷の顔をつくろひぬ