和歌と俳句

夏痩せ 夏負け

夏を痩せ棚高き書に爪立つも 誓子

夏痩せてありや浴衣の脛を抱き 楸邨

夏痩せの一個丼余したり 友二

夏痩のわが肩かなし人と会ふ 波津女

母はわが顔の夏痩のみを言ふ 

掌に熱き粥の清しさ夏やせて 多佳子

夏痩せて腕は鉄棒より重し 茅舎

夏やせと申すべきかや頬あかり 犀星

夏痩をひとに云はれぬ吾知るに 波津女

夏痩やあをあをとして竹の肌 楸邨

夏痩の臍どん底を見せにけり 朱鳥

還り来てちちははのへに夏痩せぬ 鷹女

夏痩や心の張りはありながら 虚子

夏痩のひとことごとに腹を立て 虚子

夏痩の言葉嶮しき内儀かな 虚子

夏痩やひくめにしめし帯のまた 万太郎

夏痩せてまぶたもやせて空青し 綾子

夏痩せて井戸水を汲み上げてのむ 綾子

夏痩や枯枝の雀口刮る 知世子

孤児に主婦の力遠しや夏痩せて 知世子

母と娘の似たりし顔の夏痩も 虚子

大仏を見し後夏痩刻々と 静塔

子にかまけ末女最も夏痩せぬ 虚子

夏痩せて遠くの白きもの光る 綾子

夏痩をいたはり心帯締むる 立子

臥して見る足の遠しも夏を痩せ 爽雨

着こなしの上手に夏を痩せにけり 真砂女

夏痩せの指の指輪の赤き玉 真砂女

夏痩せの膝に置く手を重ねけり 真砂女

夏痩せやきかぬ気眉にありありと 真砂女

夏負けをせぬ気の帯を締めにけり 真砂女

夏痩せて加賀宝生をまもりけり 登四郎

夏痩せて目玉の錆びる泥運河 不死男

猫だいて妻の夏痩はじまれり 双魚