和歌と俳句

清水

式子内親王
あたりまで夏ぞ忘るる山陰の清水や秋のすみかなるらむ

定家
夏ぞしる山井の清水たづねきておなじこかげにむすぶちぎりは

定家
山かげの岩ねの清水たちよれば心の内を人やくむらむ

定家
よるひると人はこのごろたづねきて夏にしられぬ宿の真清水

定家
ながき日に春秋とめる宿やこれむすべば夏もしらぬ真清水

定家
尋ねつる山ゐの清水いは越えてむすばぬ袖にあき風ぞ吹く

定家
たまぼこのみちの夏草すゑとほみ野中の清水しばしかげ見む

続後撰集・夏 按察使公通
苔のむす いはかけ清水 底きよみ 下には夏も かよはざりけり

続後撰集・夏 小侍従
さのみやは やまゐの清水 すずしとて かへさもしらず 日を暮すべき

続後撰集・夏 源季広
松がねの いはもる清水 せきとめて むすばぬさきに 風ぞ涼しき

墨筆にむすびはじめて清水哉 来山

竹の杖肩に倚せつつしみづ哉 才麿

さざれ蟹足はひのぼる清水かな 芭蕉

城あとや古井の清水先問む 芭蕉

おもふ事ながれて通るしみづ哉 荷兮

一口は味もおぼえぬ清水哉 千代女

山のすそ野の裾むすぶ清水かな 千代女

此松も柳にしたき清水かな 也有

石切の鏨冷やしたる清水かな 蕪村

水晶の山路ふけ行清水かな 蕪村

石工の飛火流るるしみづ哉 蕪村

落合ふて音なくなれる清水哉 蕪村

いづちよりいづちともなき苔清水 蕪村

二人してむすべば濁る清水哉 蕪村

我宿にいかに引べきしみづ哉 蕪村

草あらふ流の末や苔しみづ 暁台

汲てしれ命にかゝる苔清水 暁台

うつくしや榎の花のちる清水 白雄

樟の香の去年を栞の清水かな 白雄

ひとり言いふて立さる清水哉 太祇

あとさまに小魚流るゝ清水哉 几董

山寺や縁の下なる苔しみづ 几董

湧清水浅間のけぶり又見ゆる 一茶

古郷や厠の尻もわく清水 一茶

夜に入ればせい出してわく清水哉 一茶

人の世の銭にされけり苔清水 一茶

水風呂へ流し込だる清水哉 一茶

母馬が番して呑す清水哉 一茶

戸隠の家根から落る清水哉 一茶