和歌と俳句

加賀千代女

ひめ百合や姿見をする子供から

そのすがた人にうつすやねぶの花

かたまりし寒さも出たり雲の峰

かたまりし暑さの果や雲の峰

何里ほど我目のうちぞ雲のみね

蛤の城あと高し雲の峰

ゆふたちの道よりもなし日和山

夕立や後へ逃る気はつかず

夕立や卒爾な雲の一とをり

松はなしの風をあらしとも

松はなし扇の風をひびくまで

我や先団扇にうごく袋かな

若竹の老行果や団扇うり

一口は味もおぼえぬ清水

結ぶ手にあつさをほどく清水哉

口紅粉をわすれてすずし清水かげ

今つけた紅を忘るる清水かな

山のすそ野の裾むすぶ清水かな

すずしさやひとつ風にも居所

すずしさや手は届かねど松の声

牽もどす耳には涼し滝の音

唐崎の昼は涼しき雫かな

涼しさやはだかに近き茶の木畠

涼風や植所なき住居かな

朝の間のあづかりものや夏の露