ひめ百合や姿見をする子供から
そのすがた人にうつすやねぶの花
かたまりし寒さも出たり雲の峰
かたまりし暑さの果や雲の峰
何里ほど我目のうちぞ雲のみね
蛤の城あと高し雲の峰
ゆふたちの道よりもなし日和山
夕立や後へ逃る気はつかず
夕立や卒爾な雲の一とをり
松はなし扇の風をあらしとも
松はなし扇の風をひびくまで
我や先団扇にうごく袋かな
若竹の老行果や団扇うり
一口は味もおぼえぬ清水哉
結ぶ手にあつさをほどく清水哉
口紅粉をわすれてすずし清水かげ
今つけた紅を忘るる清水かな
山のすそ野の裾むすぶ清水かな
すずしさやひとつ風にも居所
すずしさや手は届かねど松の声
牽もどす耳には涼し滝の音
唐崎の昼は涼しき雫かな
涼しさやはだかに近き茶の木畠
涼風や植所なき住居かな
朝の間のあづかりものや夏の露