たたむには団扇残りて夕涼
どちからも中につたうや橋すずみ
影ばうや我とはづれて夕すずみ
影坊の森ではぐるる涼みかな
松の葉に心とらるるすずみかな
水影のもろもろ涼し夏の月
釣竿の糸にさはるや夏の月
蓋とりてつめたきかさや氷餅
せみの音やからはその根に有ながら
初蝉はどの木ともなし聞ばかり
初蝉や松の雫も絶えし時
松風もをのがのにして蝉の声
滝の音も細るや峰に蝉の声
滝の糸ほそふなる時せみの声
照もよしふるも夏野の道すがら
身にまとふものとはみえず綿の花
しののめをしのび夕がほの夜終
ゆふがほの宿や茶の香も水くさき
ゆふがおや物のかくれてうつくしき
夕顔や午さへ白ふ見ゆる頃
蓮白しもとより水は澄まねども
散ば咲ちればさきして百日紅
明日もあるに百日紅の暮れをしみ
なでしこや横にふとるも育ちより
かなしからんその夏の日のゆきあたり