和歌と俳句

加舎白雄

夜の梅いねんとすれば匂ふ也

鳥の嘴白玉椿きはつきし

あかつきや人はしらずも桃の露

朝雨や簾ごしなるなしの花

袖ずりに崖のあんずも花咲し

梢ふむ道に辛夷の白きかな

寺々を通りぬけけり花ざかり

鮎くむや桜うぐゐも散花も

をちこちの桜に舫ふいかだ哉

水つたふうしろの丘やつ ゝじ咲く

物がたり読さして見る藤の花

月遠く柳にか ゝる夜汐かな

日永きや柳見て居る黒格子

夕汐や柳がくれに魚わかつ

菫野に土竜のあげし瓦哉

菫艸杉の古根に咲入し

早蕨や一日路ならつくばやま

野の朧茅花月夜といはまほし

たんぽぽ東近江の日和かな

杉苗に杉菜生そふあら野哉

萍や生そめてより軒の雨

石原やくねりしまゝの花あざみ