和歌と俳句

加舎白雄

御田植の酒の泡ふく野風かな

明やすき夜を泣児の病かな

すゞしさや蔵の間より向島

風かほれ唐とやまとの墨の色

もたれあひてみなもろかづらさみだる ゝ

さみだれやけぶりの籠る谷の家

町中をはしる流よなつの月

雲の峯きのふに似たる今日も有

傘さしてふかれに出し青田かな

うつくしや榎の花のちる清水

樟の香の去年を栞の清水かな

潅仏や芍薬園を見すかして

潅仏や門を出れば茶の木原

いまふきしあやめにくもの工哉

笹粽わけ来し道のおもはる ゝ

更衣簾のほつれそれもよし

かへるさや胸かきあはすころもがへ

虫干や庵に久しき松ふぐり