加舎白雄
早乙女のうしろ手しばし夕詠
早乙女や水に倦みては海へ向く
下京やかやりにくれし藍の茎
嫗ひとり蚊遣に照らす白髪哉
牛洗ふ人の声聞け宵祭
蜀黍のもとにかたらふすゞみかな
舷に蓼摺小木や夕すゞみ
ゆかしとやひと見む合歓の下涼
鵜の嘴に魚とり直す早瀬かな
水くれて三十日に近き鵜川哉
川狩や鮎の腮さす雨の篠
熊野路に只夏念仏を申かな
海川や御祓のあとの雨の声
艸の葉に見すく鹿の子の額哉
むら松やきえんとしては行ほたる
かんこ鳥いまやくれぬとあや啼す
子規なくや夜明の海がなる
つゝ鳥や岐蘇のうら山きそに似て
翡翠の筑波おろしに吹るゝか
蝉啼てくるしや蓑のむらかはき
降晴て杉の香高し蝉の声