ぎをん会や僧の訪よる梶が許
端居して妻子を避る暑かな
なつかしき夏書の墨の匂ひかな
脱すてて我ゆかしさよ薄羽折
ゆふがほや黄に咲たるも有べかり
葛水や入江の御所にまうずれば
葛を得て清水に遠きうらみ哉
汗入れて妻わすれめや藤の茶屋
蝉啼くや僧正坊のゆあみ時
かりそめに早百合生けたり谷の房
自剃して涼とる木のはし居哉
蓼の葉を此君と申せ雀鮓
いづちよりいづちともなき苔清水
二人してむすべば濁る清水哉
我宿にいかに引べきしみづ哉
百日紅ややちりがての小町寺
蠅いとふ身を古郷の昼寝かな
御仏に昼備へけりひと夜酒
川狩や楼上の人見しりがほ
月に対す君に唐網の水煙
裸身に神うつりませ夏神楽
ところてん逆しまに銀河三千尺
夢さめてあはやとひらく一夜ずし
任口に白き団をまいらせむ
心太手自にせんとおぼしめす
雲の峰に肘する酒呑童子かな
佐保河を蔵にめぐらすにざけかな
見のこすや夏をまだらの京鹿子