更衣母なん藤原氏也けり
更衣矢瀬の里人ゆかしさよ
耳うとき父入道よほととぎす
をちこちに瀑の音聞く若ばかな
夏山や神の名はいさしらにぎて
こもり居て雨うたがふや蝸牛
みのむしはちちとも啼をかたつぶり
ほのぼのと粥にあけゆく矢数かな
朝比奈が曾我を訪ふ日や初がつを
殿原の名古屋皃なる鵜川かな
谷路行人は小き若葉哉
巫女町によききぬすます卯月哉
山蟻のあからさま也白牡丹
牡丹ある寺ゆき過しうらみ哉
金屏のかくやくとして牡丹かな
南蘋を牡丹の客や福西寺
尼寺やよきかやたるる宵月夜
青梅や微雨の中行飯煙
青うめをうてばかつ散る青葉かな
路辺の刈藻花さく宵の雨
さみだれや仏の花を捨に出る
小田原で合羽買たり皐月雨
あか汲で小舟あはれむ五月雨