何糸か鏡にたるるころもがへ 才麿
一ツぬひで後に負ぬ衣かへ 芭蕉
春と夏手さへ行かふ更衣 鬼貫
我はまだ浮世をぬがでころもがへ 鬼貫
塩うをの裏ほす日也衣がへ 嵐雪
角鍔に腹つき出して衣がへ 許六
八畳に炉たたみ青し衣かへ 浪化
衣がへ十日早くば花ざかり 野坡
髭に焼香もあるべしころもがへ 荷兮
剃捨て黒髪山に衣更 曾良
おもたさの目にあつまるや更衣 千代女
花の香にうしろ見せてや更衣 千代女
脱捨の山につもるや更衣 千代女
冬からの皺をぬがばや更衣 千代女
すがたみにうつる月日や更衣 也有
絹着せぬ家中ゆゆしき更衣 蕪村
兼好は絹もいとはじ更衣 蕪村
辻駕によき人のせつころもがへ 蕪村
更衣野路の人はつかに白し 蕪村
痩脛の毛に微風あり更衣 蕪村
更衣布子の恩のおもさかな 蕪村
廿五の暁起やころもがへ 蕪村
衣がへ人も五尺のからだかな 蕪村
御手打の夫婦なりしを更衣 蕪村
更衣うしと見し世をわすれ顔 蕪村
ころもがへ塵打払ふ朱の沓 蕪村
更衣母なん藤原氏也けり 蕪村
更衣矢瀬の里人ゆかしさよ 蕪村
一渡し超べき日也衣更 蕪村
更衣簾のほつれそれもよし 白雄
かへるさや胸かきあはすころもがへ 白雄
物かたき老の化粧や衣更 太祇
いとほしい痩子の裾や更衣 太祇
立むかふ広間代りや更衣 太祇
年よれば疲もをかし更衣 太祇
蝶ひとつ竹に移るや衣がへ 青蘿
更衣うすき命を祝ひけり 青蘿
病ム人のうらやみ顔や更衣 几董
更衣しばししらみを忘れたり 一茶
江戸じまぬきのふしたはし更衣 一茶
空豆の花に追れて更衣 一茶
何をして腹をへらさん更衣 一茶
下谷一番の皃してころもがへ 一茶
世に倦た皃をしつつも更衣 一茶
としといへば片手出す子や更衣 一茶
衣更て居て見てもひとりかな 一茶
一日や仕様事なしの更衣 一茶
小短き旅して見ばや更衣 一茶
曙覧
あらたむる衣ひとつもなつこだち若葉に慙る旅すがたかな