和歌と俳句

服部嵐雪

巡礼に打まじり行帰雁かな

顔に付飯粒蠅にあたへけり

元日や漸 々うごく紙鳶

桃の日や蟹は美人に笑るる

名月や煙はひ行水の上

兼好も莚織けり花ざかり

うぐひすにほうと息する朝哉

花はよも毛虫にならじ家桜

塩うをの裏ほす日也衣がへ

行燈を月の夜にせんほととぎす

文もなく口上もなし五把

竹の子や児の歯ぐきのうつくしき

七夕やふりかはりたるあまの川

つくり木の糸をゆらすや秋の風

白鳥の酒を吐らん花の山

青嵐定まる時や苗の色

つき立ての餅に赤子や年の暮

白露や角に目を持かたつぶり

常燈や壁あたたかにきりぎりす

武蔵野の幅にはせばき

此下にかくねむるらん雪仏

山鳥のおろおろなきや五月雨

水茎の馬刀かき寄せん筆の鞘

白雨や障子懸たる片びさし

今少し年寄見たし鉢たたき