和歌と俳句

牡丹 深見草

花小さき牡丹に祭来たりけり 普羅

葉がくれて月に染まれる牡丹かな 普羅

大空に牡丹かざして祭すむ 普羅

茂吉
近よりて われは目守らむ 白玉の 牡丹の花の その自在心

茂吉
白牡丹 つぎつぎひらき にほひしが 最後の花が けふ過ぎむとす

八一
いちじろく ひときのつぼみ さしのべて あさをぼたんの さかむとするも

白牡丹萼をあらはにくづれけり 蛇笏

つまづきて見しは牡丹のくもりかな 楸邨

緋牡丹の爪に映えゐて針すすむ 知世子

君の手に牡丹の大き花一つ 草城

ぼうたんのひとつの花を見尽さず 草城

君去りて君のごとくに牡丹あり 草城

ぼうたんのいのちのきはとみゆるなり 草城

牡丹観る仰臥の顔を傾けて 草城

わが顔と牡丹の顔と真向かへる 草城

見てゐたる牡丹の花にさはりけり 草城

牡丹散るほとりに暮れてパン粉練り 楸邨

火の記憶牡丹をめぐる薄明に 楸邨

牡丹生けてうすき蒲団に臥たりけり 信子

露しみとなりし牡丹の薄埃 朱鳥

やがて沈む日の当りをる牡丹かな 立子

吾を生みし天に日月地に牡丹 朱鳥

一弁を仕舞ひ忘れて夕牡丹 虚子

瑠璃の朝牡丹が壺にひらきける 秋櫻子

いそがざるものありや牡丹に雨かかる 多佳子

牡丹哀しもとより草の深ければ 万太郎

いつのまに咲いてしまへる牡丹かな 万太郎

わが庭の牡丹の花の盛衰記 虚子

人の世の今日は高野の牡丹見る 虚子

牡丹百二百三百門一つ 青畝

牡丹見て深く心に写したり 青畝

白牡丹暮れず関白自刃の間 青畝

白きひげまじるを剃りて牡丹に 青邨

浮き沈む牡丹軒より落つる風 青邨

かがまりしかんばせおほひ牡丹咲く 爽雨

雹破れしてぞ傘立つ庭牡丹 爽雨

牡丹の散りてちり添ふ蕋かなし 爽雨

牡丹よしただ葉だたみの一株も 爽雨

あるじ手をやりて牡丹雨を吐く 爽雨