和歌と俳句

薫風 風薫る

弥勒の眼無我で見てゐて風薫る 知世子

理学部は薫風楡の大樹蔭 虚子

湯の島の薫風に舟近づきぬ 虚子

天蓋の鳳は薫風の空のもの 秋櫻子

薫風やけぶりて見えぬ海地獄 秋櫻子

薫風に舞ひし陵王の面なれや 秋櫻子

薫風や友の佳き子を見つつたのし 草城

薫風やいと大いなる一つ 万太郎

薫風や岩にあづけし杖と笠 万太郎

詩碑はその母校の前の薫風に 爽雨

風邪引いてをり薫風をうとみけり 草城

風薫る甘木市人集ひ来て 虚子

先生はふるさとの山風薫る 草城

薫風や赤ネクタイの老紳士 立子

開聞岳薫風あそぶ雲もなし 秋櫻子

薫風やすこしのびたる蕎麦啜り 万太郎

それとなき病のすすみ風薫る 万太郎

薫風や海豹の頭の濡れどほし 秋櫻子

薫風や太鼓とどろく御柱 秋櫻子

薫風に真珠育て荒男ども 悌二郎

薫風の床几火山灰降るぢやんぼ餅 秋櫻子

命ありて立つ長城の薫風に 林火

雲仙の薫風入れよ鯛茶漬 秋櫻子