薫風や友の佳き子を見つつたのし
かびの香やくちびる沈むひげの中
妻機嫌よき日は百合も匂ひ立つ
初蝉をきくや廚の妻を呼び
地震激したかぶる妻と子に抱かれ
緑の五月朝のそよ風メツォソプラノ
薔薇紅し水もコップも透明に
四つの花四方に開きてアマリリス
無伴奏チェロ麦秋の星月夜
笹百合は匂ひ濃し蕊しづかにて
朝蝉しぐれけふも炎ゆらむ空青く
溽暑し国会賢愚混沌と
ジェット機がキューンと低し仰臥の天
大夕立田川たちまち興奮す
風邪引いてをり薫風をうとみけり
風邪引いて炬燵を愛す新緑裡
すずらんや昨日函館の野にありし
すずらんのりりりりりりと風に在り
雨蛙見ゆるがごとく鳴きにけり
出戻りの美人の散歩麦の秋
梅雨晴れ間すぐ曇り雀鳴き縺れ
古妻の遠まなざしや暑気中り
白粥のうす塩味や暑気中り
悪猫がのそのそ通る大旱
夕涼しちらりと妻のまるはだか