実ざくらやをとめさびつつ人みしり
スウイングや浅き昼寝のゆめうつつ
わくら葉をゆびにひろへり長やまひ
明日の米無き土砂降りの夜更の灯
梅雨のあめしづかに瓜の蔓の智慧
てのひらの来て握りたる今年竹
今年竹かなしきばかりあをあをと
濃かにしてしづかなる今年竹
梅雨風呂や凡夫煩悩垢無限
匂ふなり遠き梢の朴の花
長やまひけふの卵の値を嘆く
売らまくの訪問服を着て見せよ
皓々と泰山木のけさの花
昼寝ざめ泰山木の花の香に
万緑に泰山木の花二つ
泰山木七つの蕾ひらき次ぐ
泰山木の花視野になしそのかをり
墨かをり泰山木の花かをる
あひびきがのろのろ歩く蓮の花
仰臥して四肢を炎暑に抑へらる
妻萎えて草木の萎えを戻り来る
ゆるやかに炎暑の琴の音の粒
夕日を見てイタリアの唄を聴いてゐる
昼寝ざめ眼に深みどり口粘る