和歌と俳句

日野草城

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いさかひて仲なほりして薔薇の花

蠅生れ身辺錯綜す家事俳事

妻子を擔ふ片眼片肺枯手足

新緑や老師の無上円満相

先生の眼が何もかも見たまへり

先生はふるさとの山風薫る

新緑や日光あぶら濃くなりて

ヴィタミンB欠乏症か蠅ちらつく

客去りて客来るまでの昼寝かな

妻の汗見てわがを拭ひけり

妻が飲むビールの冷えを飲み下す

三伏や昼の浄瑠璃ラヂオより

眠れざることえお嘆かず喜雨ひびく

次の間に妻も覚めをり喜雨ひびく

喜雨そそぐ音あり次の寝覚めにも

祇園会や女ざかりの汗見事

蝉暑し颱風二つ天気図に

古妻と古猫と午下熟睡す

万緑や神々パレ・デ・ナシオンに

桃トマト小冷蔵庫なれど冷ゆ

蒲焼うまし蠅の奇襲を手に防ぎ