いさかひて仲なほりして薔薇の花
蠅生れ身辺錯綜す家事俳事
妻子を擔ふ片眼片肺枯手足
新緑や老師の無上円満相
先生の眼が何もかも見たまへり
先生はふるさとの山風薫る
新緑や日光あぶら濃くなりて
ヴィタミンB欠乏症か蠅ちらつく
客去りて客来るまでの昼寝かな
妻の汗見てわが汗を拭ひけり
妻が飲むビールの冷えを飲み下す
三伏や昼の浄瑠璃ラヂオより
眠れざることえお嘆かず喜雨ひびく
次の間に妻も覚めをり喜雨ひびく
喜雨そそぐ音あり次の寝覚めにも
祇園会や女ざかりの汗見事
蝉暑し颱風二つ天気図に
古妻と古猫と午下熟睡す
万緑や神々パレ・デ・ナシオンに
桃トマト小冷蔵庫なれど冷ゆ
蒲焼うまし蠅の奇襲を手に防ぎ