和歌と俳句

薫風 風薫る

薫風や下駄の低さの恥しく 喜舟

薫風や花をはりたる牡丹園 草城

薫風や島を案内の跣足の子 泊雲

薫風や花見塚とて芭蕉の碑 石鼎

薫風や畳の上の竹の埒 石鼎

薫風や宝壺の蓋の古金襴 石鼎

薫風や子猫下り次ぐ庭草に かな女

薫風や舳の桶に烏賊泳ぐ 秋櫻子

薫風の眉たかぶりてわかものよ 草城

薫る風遠き帷に見ゆるかな 草城

薫風や晩餐の足芝を踏み 草城

薫風や楊枝くはへて水夫立つ 虚子

ふんまへて南志那海風薫る 虚子

風薫る鹿島の杉は剣なす 茅舎

杉美まし鹿島は風のかをる宮 茅舎

薫風の葉とは重なり重ならず 石鼎

鳩立ちて児は呆然と風かほる みどり女

薫風や釣舟絶えず並びかへ 久女

疑ふな神の真榊風薫る 久女