和歌と俳句

杉田久女

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籘椅子に看とり疲れや濃紫陽花

窓明けて見渡す山もむら若葉

帰り来て天地明るし四方若葉

新樹濃し日は午に迫る蝉の声

葉桜や流れ釣なる瀬戸の舟

降り歇まぬ雨雲低し枇杷熟れる

わがもいで愛づる初枇杷葉敷けり

わがもいで贈る初枇杷葉敷けり

薫風や釣舟絶えず並びかへ

釣舟の並びかはりし籐椅子かな

晩涼や釣舟並ぶ楼の前

大釜の湯鳴りたのしみ蟹うでん

大鍋をはみ出す脚よ蟹うでん

朱欒咲く五月となれば日の光

朱欒咲く五月の空は瑠璃のごと

天碧し廬橘は軒をうずめ咲く

花朱欒こぼれ咲く戸にすむ楽し

南国の五月はたのし花朱欒

常夏の碧き潮あびわがそだつ

爪ぐれに指そめ交はし恋稚く

島の子と花芭蕉の密の甘き吸ふ

砂糖黍かぢりし頃の童女髪

海ほうづき口にふくめば潮の香