和歌と俳句

杉田久女

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平凡の長寿願はずまむし酒

物言ふも逢ふもいやなり坂若葉

歩みよる人にもの言はず若葉蔭

宮ほとり相逢ふ人も夏装ひ

竹の子を堀りて山路をあやまたず

百合を堀り竹の子を掘る山路かな

ふと醒めて初ほととぎす二三声

魚より百合根がうまし山なれば

彦山の天は晴れたり鯉幟

満開のさつき水面にてるごとし

早苗束投げしところに起直り

雨晴れて忘れな草に仲直り

逢ふもよし逢はぬもをかし若葉雨

日が照れば登る坂道鯉幟

菖蒲ふく軒の高さよ彦山の宿

道をしへ法のみ山をあやまたず

道をしへ一筋道の迷ひなく

何もなし筧の水に冷奴

熟れそめし葉蔭の玉のごと

露の葉をかきわけかきわけ苺つみ

朝なつむ苺の露に指染めむ

緑葉にかくさうべしや紅苺

朝日濃し苺は籠に摘みみちて

手づくりの苺食べよと宣す母

初苺喰ませたく思ふ子は遠く