和歌と俳句

杉田久女

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海ほうづき流れよる木にひしと生え

海ほうづき鳴らせば遠し乙女の日

吹き習ふ麦笛の音はおもしろや

潮の香のぐんぐんかはく貝拾ひ

杜若雨に殖えさく高欄に

杜若映れる矼をまたぎけり

ばら薫るマーブルの碑に哀詩あり

蝉涼し汝の殻をぬぎしより

の乙女は笑まし腋を剃る

壇浦見渡す日覆まかせけり

日覆かげまぶしき潮の流れおり

おびき出す砂糖のの黒だかり

英彦より採り来し小百合莟むなり

冷水をしたたか浴びせ躑躅活け

実梅もぐ最も高き枝にのり

千万の宝にたぐひ初トマト

処女の頬のひほふが如し熟れトマト

母美しトマトつくりに面痩せず

朝に灌ぎ夕べに肥し花トマト

降り足りし雨に育ちぬ花トマト

新鮮なトマト喰ふなり慾もあり

青芒ここに歩みを返しつつ

たてとほす男嫌ひの単帯

張りとほす女の意地や藍ゆかた

一束の緋薔薇貧者の誠より

一椀の餉にあたたまり梅雨の寺