住みかはる扉の蔦若葉見て過ぎし
厨着ぬいでひとり汲む茶や若楓
傘にすけて擦りゆく雨の若葉かな
月見草に月尚ささず松の下
茄子苗の日除し置いてまた縫へり
茄子もぐや日を照りかへす櫛のみね
月に出て水やる音す茄子畠
牛蒡葉に雨大粒や竿入るる
簀戸たてて棕櫚の花降る一日かな
子犬らに園めちやくちや箒草
つれづれの小簾捲きあげぬ濃紫陽花
箒目に莟をこぼす柚の樹かな
蓮咲くや旭まだ頬に暑からず
水暗し葉をぬきん出て大蓮華
日を遮る広葉吹きおつ日ごと日ごと
汲みあてて花苔剥げし釣瓶かな
麦湯湧かしくど日もすがら松の根に
水上げぬ紫陽花忌むや看る子に
面痩せし子に新しき単衣かな
庭木のぼり蛇見てさわぐ病児かな
床に起きて絵かく子となり蝉涼し
夏雨に母が炉をたく法事かな
目にしみて炉煙はけず茄子の汁
茄子買ふや框濡らして数へつつ
夏雨に炉辺なつかしき夕餉かな