落葉道掃きしめりたる箒かな
わが歩む落葉の音のあるばかり
ゆく年の忙しき中にもの思ひ
戯曲よむ冬夜の食器浸けしまま
訪れて山家は暗し初時雨
水焚や入江眺めの夕時雨
更けて去る人に月よし北の風
北風に訪ひたき塀を添ひ曲る
北風の藪鳴りたわむ月夜かな
寄鍋やたそがれ頃の雪もよひ
寒風に葱ぬく我に絃歌やめ
寒林の日すぢ争ふ羽虫かな
枯野路に影かさなりて別れけり
冬川やのぼり初めたる夕芥
櫛巻に目の縁黒ずむ冬女
炭つぐや髷の粉雪を撫でふいて
炭ついでおくれ来し人をなつかしむ
足袋つぐや醜ともならず教師妻
軒の足袋はづしてあぶりはかせけり
白足袋に褄みだれ踏む畳かな
絨毯に足袋重ねゐて椅子深く
椿色のマント着すれば色白子
遊学の我子の布団縫ひしけり
湯気の子をくるみ受取る布団かな
六つなるは父の布団にねせてけり