和歌と俳句

杉田久女

落葉道掃きしめりたる箒かな

わが歩む落葉の音のあるばかり

ゆく年の忙しき中にもの思ひ

戯曲よむ冬夜の食器浸けしまま

訪れて山家は暗し初時雨

水焚や入江眺めの夕時雨

更けて去る人に月よし北の風

北風に訪ひたき塀を添ひ曲る

北風の藪鳴りたわむ月夜かな

寄鍋やたそがれ頃の雪もよひ

寒風に葱ぬく我に絃歌やめ

寒林の日すぢ争ふ羽虫かな

枯野路に影かさなりて別れけり

冬川やのぼり初めたる夕芥

櫛巻に目の縁黒ずむ冬女

炭つぐや髷の粉雪を撫でふいて

炭ついでおくれ来し人をなつかしむ

足袋つぐや醜ともならず教師妻

軒の足袋はづしてあぶりはかせけり

白足袋に褄みだれ踏む畳かな

絨毯に足袋重ねゐて椅子深く

椿色のマント着すれば色白子

遊学の我子の布団縫ひしけり

湯気の子をくるみ受取る布団かな

六つなるは父の布団にねせてけり