遊学の旅にゆく娘の布団とぢ
かざす手の珠美くしや塗火鉢
筆とればわれも王なり塗火鉢
ひとり居も淋しからざる火鉢かな
かき馴らす塩田ひろし夕千鳥
首の捲く銀狐は愛し手を垂るる
牡蠣舟や障子のひまの雨の橋
君来るや草家の石蕗も咲き初めて
そののちの旅便りよし石蕗日和
冬ごもる簷端を雨にとはれけり
洞門をうがつ念力短日も
厳寒ぞ遂にうがちし岩襖
松葉焚くけふ始ごと煖炉かな
ストーヴに椅子ひきよせて読む書かな
燃え上る松葉明りの初煖炉
横顔や煖炉明りに何思ふ
投げ入れし松葉けぶりて煖炉燃ゆ
霜晴の松葉掃きよせ焚きにけり
冬晴の雲井はるかに田鶴まへり
田鶴舞ふや稲城の霜のけさ白く
蔓ひけばこぼるる珠や冬苺
初雪の久住と相見て高嶺茶屋
クリスマス近づく寮の歌稽古