和歌と俳句

鹿児島

憲吉
甲突川に浸せる布のくれないのゆらぎゆらぎて春の日さすも

憲吉
松みなが砂にうもれて稍ひくくわが眼のほどにつづく松原

かるかんの出はじめにあふ秋の旅 野風呂

南国の五月はたのし花朱欒 久女

朱欒咲く五月となれば日の光 久女

朱欒咲く五月の空は瑠璃のごと 久女

樟並木冬艶々と繁華街 汀女

太陽に襁褓かかげて我家とす 鳳作

石垣は弾痕深し母子草 秋櫻子

幟立つを見おろす墓ぞ七百基 秋櫻子

薫風の床几火山灰降るぢやんぼ餅 秋櫻子

火山灰除に薩摩をとめの頬被 青畝

城山

茂吉
城山に のぼり来りて 劇しかりし 戦のあと つぶさに聞きて去る

迢空
額のうへに くらくそよげる城山の 梢をみれば、夜はさかりなり

開聞岳

茂吉
開聞の さやかに見ゆる この朝け 櫻島のうへに 雲かかりたる

開聞岳薫風あそぶ雲もなし 秋櫻子

岳の雲鬱々凝りぬ樟若葉 秋櫻子

大隅

茂吉
大隅は 山の秀つ國 冬がれし 山のいただき 朝日さすなり

大隅に湧く夏雲ぞ目に恋し 鳳作