和歌と俳句

櫻島

憲吉
桜島すその松山松まじり咲ける椿にうぐひす啼くも

憲吉
唐湊山に日は入りぬれど海中は桜島嶺のあかあかと見ゆ

茂吉
櫻島は 黒びかりして そばだちぬ 熔巌ながれし あとはおそろし

溶岩の上を跣足の島男 虚子

秋晴に島のをとめの手をかざし 虚子

あまつ日に頂裂けぬ秋の島 かな女

火の山はうす霞せり花大根 鳳作

傘火消ゆ闇にもどりし櫻島 鳳作

かかへゆく凧にこたへて桜島颪 鳳作

風鈴や灯りそめたる櫻島 鳳作

小春日や雲の影這ふ櫻島 鳳作

吹きあほつ日覆のうちの櫻島 鳳作

火の島の裏にまはれば蜜柑山 鳳作

噴煙の吹きもたふれず鷹澄める 鳳作

噴煙を知らねば海豚群れ遊ぶ 鳳作

噴煙の夜はあかければ鳴く千鳥 鳳作

行く秋の噴煙そらにほしいまま 鳳作

羽子の児に熔岩の山垣おし迫り 爽雨

元日の島の子甘蔗を噛めるのみ 爽雨

穂芒や水なき川が海に落つ 秋櫻子

押しいでし熔岩に朱欒の邑のこる 秋櫻子

懸巣鳴き遠雲脱げり櫻島 秋櫻子

芒晴れけぶりさだかに櫻島 秋櫻子

龍膽や雨走らしむ峰の雲 秋櫻子

春暁の雲とびとびや櫻島 青畝

真円き夕日霾るなかに落つ 汀女

噴き上げの太く真直ぐに秋進む 汀女

冬日温し行きひろがれる溶岩に 汀女

夕焼の噴煙凝りて飛燕落つ 秋櫻子

桜島とどろき噴けり旧端午 秋櫻子

熔岩原もやや木々おほひ高音 爽雨

一舟を熔岩の入江に島の秋 爽雨

火の山を負へれば詩碑に秋の声 爽雨

一発の冬雷高し櫻島 青畝