野菊見るひとつびとつは弁を欠き
宮址出て隠岐の高稲架手ふれゆく
水にほふ橋をぞ郡上踊見に
踊待つ城を四山の一峰に
櫓いま故老笛とる踊らめや
葛もてつづる簗の簀踏みわたる
桟橋に湖の鯉釣れ天高し
帝陵をさがるに野菊ひしひしと
わたりゐる蔓には連珠草の露
閼伽さげて塔下のゆきき秋彼岸
萩もやや枝のながれの相へだつ
月の供華活けつつ向ふ庭は雨
三人くる秋の袷に背もそろひ
千木見ればとぶ落葉あり秋祭
熔岩原もやや木々おほひ鵙高音
一舟を熔岩の入江に島の秋
火の山を負へれば詩碑に秋の声
海の上へ荒磯のとんぼ出でやまず
海坂の薩摩の岬の秋二つ
鶏頭をうしろにたちゐ障子張る
雲の来てまた一すすみ後の月
国原の田にして落穂とりかざす
憩ふなる鎌稲架に刺し晩稲刈
なぞへなす遠の夜長の灯は馬籠
落鮎の山川昨日のにごりなし