泉声に大寺大き切子吊る
大闇に退きし本堂踊たつ
引きて見む葛の花咲く蔓いづれ
花野ゆく葛踏み敷きしみちあれば
火山灰つむじ先だつ下山秋の風
寝ころびし爪先にはね秋の風
瞳海に星のみの星ながれつぐ
縁にまた膝つく音の障子張る
忌明けさへ遠のく秋の袷着る
初萩にめざとく縁を下りたるか
木犀のこぼれ花より湧ける香も
鶏頭の種採り地へもこぼしおく
江田島は裾に廃艦秋の潮
椋鳥わたる羽風額にふるるごと
鵙のいま刻み鳴きして刺す贄か
露店立つ前を走り根秋まつり
水引の秋ゆく花をさらに密
木曾の秋串餅とりて窓による
参道にひらく扇も露のもの
嵐峡の舟に旅いま扇措く
天降る音もありて峡なる虫の秋
高稲架の日おもてにして穂の満つる
この浦の戸々に船倉天高し
野菊濃し旅の参陵参仏に