鵙なくやひそかにひかる床ばしら 万太郎
鵙騒ぐ鏡面醜をあざやかに 鷹女
初鵙や過去に棒線太く引く 鷹女
何思ひゐしや鋭声の鵙過ぐる 波津女
晴天は鵙がもたらすものなりや 波津女
ある朝の鵙きゝしより日々の鵙 敦
青年は井戸で水飲む百舌鳥叫ぶ 三鬼
鵙のこゑ寺に覆ひし琴立てり 誓子
百舌鳥来鳴き夜明の妻は病めるなり 秋櫻子
頂髪欠けて鬢髪ゆらぐ鵙の晴 草田男
鵙は尾をくるりくるりと吾が首途 誓子
のけぞる百舌鳥雲はことなくみゆれども 三鬼
捨科白めく唾吐けば鵙嘖す 草田男
黙しゐる梢の鵙の威あきらかに 爽雨
百舌鳥鳴くや雲みだれ寄る槍ケ岳 秋櫻子
鵙高音ふたたび三たび鵙高音 立子
絶対安静眦に鵙の天 多佳子
鵙ききと人の心をかき乱し 立子
鵙ひびく深大寺蕎麦冷えにけり 波郷
人訪はぬ百舌鳥の松のみ法輪寺 秋櫻子
鵙鳴いてにはかに昏し黙祷す 波郷
ふるさとの第一日の長鳴き鵙 波郷
君が子も背高のつぽ鵙仰ぐ 波郷
鵙の嘴東京オリンピック来向へり 波郷
鵙の歌ピーマンの紅極まりぬ 波郷
鵙啼きて思はず青き空を見る 立子
天彦にあらそふ百舌も暮れにけり 青畝
鳴かねば見えぬもののあるなり百舌鳴けり 楸邨
鵙の森息も切らさず歩きたし 波郷
鵙のいま刻み鳴きして刺す贄か 爽雨
鵙日和病室に妻の跫音して 波郷
病床にわれは顔上ぐ百舌鳥叫ぶ 波郷
鵙ひびく野に忘れられ薬師堂 悌二郎
八角重塔双輪高し鵙ひびく 悌二郎
熔岩原もやや木々おほひ鵙高音 爽雨
鵙来鳴く机辺このごろ遠めがね 爽雨
鵙高音墓開眼の経にそふ 爽雨
鵙が鳴き青き童謡日和あり 静塔
鵙の窓あけ白秋の勉強間 静塔