またしても日は昃りきぬ鵙高音 占魚
夕百舌に野川溢るる雨となり 亞浪
夕鵙の心右にし左にし 汀女
百舌の声豆腐にひびくそれを切る 三鬼
われありと思ふ鵙鳴き過ぐるたび 誓子
墓地の道鵙に鳴かれて引きかへす 林火
鵙きくや片足あぐる石の上 楸邨
わらひだすまでに不運や鵙たける 楸邨
鵙たけるロダンの一刀われにほし 楸邨
もの思へば鵙のはるけくなりゆける 信子
暮れて鳴く百舌鳥よ汝は何告げたき 多佳子
荒百舌鳥や涙たまれば泣きにけり 多佳子
百舌鳥の下みな雨ぬれし墓ばかり 多佳子
傘いつも前風ふせぎ雨の百舌鳥 多佳子
断崖や激しき百舌鳥に支へられ 多佳子
百舌に顔切られて今日が始まるか 三鬼
叫ぶ心百舌は梢に人は地に 三鬼
息ふとく生きねばならず朝の鵙 楸邨
焼跡の鵙ぞと何を恋ふるかな 波郷
血を喀いて鵙きく顔をかなしむや 波郷
鵙なくや見送るひともなくて出づ 信子
港都の美鵙のとどまるところあり 蛇笏
鵙昏れて女ひとりは生きがたし 鷹女
鵙が啼く無名作家の我が耳に 鷹女
つばさ無きかなしさ鵙に啼き去られ 鷹女
白髪の華のごときに鵙のこゑ 耕衣
鵙叫ぶ老呆けて生きたくはなし 誓子
鵙の朝肋あはれにかき抱く 波郷
鵙遠し肢を緊縛されつつをり 波郷
たばしるや鵙叫喚す胸形変 波郷
鵙よ遠母に再た手術すと告げ得むや 波郷
仕事重し高木々々と百舌鳥移り 三鬼
錐もみに鵙が国旗の朱を指し 静塔
鵙ないて洗濯挟みバネきつく 波津女
わが鼻の未明に泛び鵙なけり 波郷
猛れると呟きをると鵙二つ 波郷
鵙の目の病者へくるや横に翔つ 波郷