熱砂来て沖も左右も限りなし
一荷づく九十九里浜の汐を汲む
旱天やうつうつ通る青鴉
青柿の下に悲しき事をいふ
月夜の蛾墓原を抜け来し我に
炎天の人なき焚火ふりかへる
青柿は落つる外なし燈火なし
しゆんぎくを播き水を飲みセロを弾く
灯を消せば我が体のみ秋の闇
秋浜に稚児の泣声なほ残る
農婦来て秋のちまたに足強し
秋天にボールとどまる少女の上
稲妻に道真向へば喜ぶ足
法師蝉遠ざかり行くわれも行く
ぼんやりと出で行く石榴割れしした
身を屈する礼いくたびも十五夜に
十五夜に手足ただしく眠らんと
夕焼へ群集だまり走り出す
百舌に顔切られて今日が始まるか
秋雨にうつむきし馬しづくする
青年の大靴木の実地にめり込む
秋の森出で来て何かうしなへり
叫ぶ心百舌は梢に人は地に
こほろぎの溺れて行きし後知らず
蟋蟀のひきずる影を見まじとす