クリスマス馬小屋ありて馬が住む
クリスマス藷一片を夜食とす
猫が鶏殺すを除夜の月照らす
蝋涙の冷えゆく除夜の闇に寝る
切らざりし二十の爪と除夜眠る
老婆来て赤子を覗く寒の暮
木枯の真下に赤子眼を見張る
誰も見る焚火火柱直立つを
北風に重たき雄牛一歩一歩
北風に牛角を低くして進む
静臥せり木枯に追ひすがりつつ
木枯過ぎ日暮れの赤き木となれり
燈火なき寒の夜顔を動かさず
寒の闇ほめくや赤子泣く度に
朝若し馬の鼻息二本白し
寒の地に太き鶏鳴林立す
電柱の上下寒し工夫登る
寒の夕焼架線工夫に翼なし
電工が独り罵る寒の空
酔ひてぐらぐら枯野の道を父帰る
汽車全く雪原に入り人黙る
焼原の横飛ぶ雪の中に病む
マスク洩る愛の言葉の白き息
巨大なる蜂の巣割られ晦日午後
友搗きし異形の餅が腹中へ