和歌と俳句

飯田蛇笏

雪峡

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向日葵の葉にとぶ蠅やみなみかぜ

夏露や蔓豆の手に啼く鴉

朝かげす蕗の葉にはねみづすまし

つゆくさの金いちじるくまたほのか

はたおりのとぶとみるよりなほあがる

あさにじのたちて菜園はないちご

虹きえて諸嶺にとほき釈迦ヶ嶽

大富士のはるか下雲涼新た

四方のちかやまはまだかすみをり

新月のさすより岩魚つり惜しむ

にぎやかに盆花濡るる嶽のもと

林帯をかける橿鳥秋の嶽

港都の美鵙のとどまるところあり

花さかる茎のうすいろ曼珠沙華

菜園やつぶさにしげきちちろ蟲

燈をさげて観音寺みち秋の夜

秋の昼街あるく手がわすられし

巣は焦げて秋蜂無慚天蒼く

鐡橋に水ゆたかなる冬日和

うたひめにネオンかはたれはつしぐれ

つかのまのきづなをたちてひなたぼこ

海たかく街見通しに冬かもめ

聖樹ともり大丸の窗冬ぐもる

蓮枯れて晴れのむら雲姫路城

とくゆるく雪蟲まひて蘇鐵寺