ブザー鳴る夜学の銀河の行方かな
羽織借りてすぐにあたたか秋の雨
一本の竹のみだれや十三夜
みぞそばに沈む夕日に母を連れ
雨粒のときどき太き野菊かな
川の香といふは藻の香や後の月
烈日の美しかりし桔梗かな
旅の子の第一信や花桔梗
右左秋の風吹き雲流れ
秋風の通ふ机に膝入るる
書いて行くひとつのことに鉦叩
その後の月日たのまず法師蝉
秋汐の暗き方のみ眺められ
朝露の秋草も摘み髪も梳き
美しき横雲日々に貝割菜
次々に風落ちて行く花芒
木犀に三日月の金見失ひ
夜霧とも木犀の香の行方とも
もの音のここにと絶えて秋薊
朝寒や厨もすぐに片づきて
夕鵙の心右にし左にし
秋雨の雨滴れ近くピアノ鳴り
久しくて次なる雁の鳴き渡る
貼り替へし障子に早き夜霧かな
秋の日のすぐに傾く白障子