松本たかし
帝釈をたつきの町の秋日和
帝釈の昼の太鼓や芋を掘る
帝釈へ詣でたち寄る柿の家
帝釈を芋の葉越しの藁の家
昼の蟲一期のホ句を案ずらし
天高しのけ反り見れば塔も反る
正面に懸かる秋日に塔の影
秋晴に遊べる魂の我とあり
伊吹嶺は流石雲居て秋の晴
塔周りおよそ夜寒の小家がち
鳳凰堂被覆して修理秋の水
宇治川の瀬を早みかもひた紅葉
急流の跳ねゐる玉やうす紅葉
宇治川の瀬波淵波もみぢ照る
水叫び紅葉騒立ち宇治暮るる
天守閣上閣下の群集秋晴るる
鯱の金ある時黒し秋の空
夕鵙の唯一陣や湾の中
菊市の町筋城に尽きてあり
菊市の菊買ひ提げて城さやか
黒潮の夜長の叫び今か聴く
岬に彳つ我を囲みて鯖火燃ゆ
宵闇に漁火鶴翼の陣を張り
海中に都ありとぞ鯖火もゆ
漁り火の海の都も夜長かな