彼の船の煙いま濃し秋の海
村の上の山にも赤し曼珠沙華
秋晴や何かと干せる村の橋
竹藪に纏ふ零余子のやや黄ばみ
山路を遮る零余子黄葉かな
竹山を零余子黄葉の裾どりし
秋雨や小屋より出でし船の舳
僧房へ少し山路や曼珠沙華
山墓の春の椿の今は実に
穂薄に埋れ居れば風起る
庭薄かげりて沼もかげりけり
山を出て町まで行くや崩れ簗
末枯れの草を離れて靄はあり
朝寒く夜寒く人に温泉あり
渋川や四万へ伊香保へ夜寒人
渓谷を飛ぶ紅葉あり温泉の窓
紅葉濃し谷川嶽の雪照りて
紅葉山高くそそりて利根細る
紅葉山ずかと塞ぎて国境
松蟲を聞きに来にけり城ヶ島
萩遅し病み臥す人に早く咲け
秋水に五色の鯉の主かな
秋水に大鯉騒ぐこともなし